こんにちは(9.1) / 承前

A○●△▲♂が甥に語ったことの続きです。本物の引用があるので、地の文に発言を書きます。引用部分は『この人の閾(いき)』(ISBN:4103982020)からの引用です。中二については、はてなキーワード中二病」を参照してください。

++++++ココから発言++++++

ところで今から中二の話をするでぇ。お前も今から中二に備えるんや。中二っちゅーてもこれは中二に限った話や無くて、単に最初に意識されるんが中二やから中二やで。実際は一生ついてまわる問題や。たとえば、あれや、四十路のおじさんがやな、いきなりアレや、物作りとかしだすやろ? やたら屋外に出たり。いくらフィクションの体裁取ったかて書けることと書けん事があるからこれ以上は詳しく触れんけど、わかるやろ。あれもある意味、限定された文脈において中二や。でっかい中二やなぁ。"謎の四十路中二男"やで。
まぁでも中二はええ事や。上を向くなら常に中二であらなあかんのや、より強靱で隙のない中二を目指すんや。よっしゃ、いままでおっちゃんがみた中で一番強い中二、その組み立ての緻密なことからいって最もタフな中二を紹介したる。保坂先生の『この人の閾(いき)』の一節や。真紀さんは読む本を内容ではなく、量で選んでいるんやけど、その観点からニーチェはあまり良くないことについてや。P58

「アレ、けっこうすらすら読めちゃうじゃない。それにニーチェって、一瞬にしてわかるかそうじゃなかったら、ずっとわからないみたいな書き方でしょ? 違うのよね。ヘーゲルとかハイデガーなんかの方がねちねちしてて良い」

これやで! この言い方は非常に良い。ピュアそのものや。わしが読んだ限りでは、三沢さん(主人公)は真紀さんのピュアさについて疑いの目は向けず、ただそれは勿体ないというようなことを思うらしい。そんでイルカの頭の良さについてとかごちゃごちゃ話して、そのあとの真紀さんの発言や。

「ほら。ヨガの行者がすごいんだったら、海の底にいるタコだってきっとすごいのよ。禅の高僧なんかは徳が高そうなポーズを身につけてるだけなんじゃないの? 人っていうのは、自分たちのいる世界と全然違う世界観みたいなのを持ってる人のことは驚くようにできているのよ」

つまり、真紀さんは自分のヘーゲル趣味について、それはタコのようにしょうもないもんやでぇ、自分は背伸びしてヘーゲル読んでるんやないんやで? ということをいうわけです。やで。という読み方は読者も三沢と同じように、禅の高僧ははったりでヘーゲル好きははったりじゃない可能性もあるというような、ヘーゲル凄い! ヘーゲルは中二の背伸びで読むかもしれんけど、禅はどうせはったりだから背伸びするにしても禅はやらん、"ぜん"は"せん"、みたいな前提が必要なわけやで。
一つ残念なのは、真紀さんは三沢に話してしまったことで完全なピュアさを保てなくなってしまったという点やな。どうせなら、誰にも絶対いわない、むしろ恥ずかしいと思っている、位までいかな完全なピュアは達成できんな。まぁでも後は文句の付け所がないで。実際三沢は非常に恐れいっとる。ポイントとしては、出来るだけ遠く、そうやなぁ、四世紀くらい離れた上で『Just for Fun』やで。
まぁでもお前に真紀さん流はまだ早いな。こんど小遣いやるからリルケの詩集こうてこい。そんで、小学校あがったら、自分の金で買った初めての本はリルケの詩集やって言い張るんやで。(甥:せなこというたかて、おいちゃん、わしほんまそんなんようせんて)

++++++ココまで発言++++++

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