スポーツクラブについて(13)

來未
それは本当に驚きだわ! ただ驚きに満ちているだけではなくて、あらかじめ対応を用意しておくべき問題を提示しているようでもある。そんな、平気で嘘を吐く人たちに出会ったら、我々はいったいどう対処すればいいのか。とても興味深いテーマだわ。なぜ、社長のベンツは4ドアなのか、が公式に解明されたら、次はこの問題に取り組むつもり。2ドアだと、大勢で移動するときに乗りにくいからじゃないかしら、と推測しているけれど……。それとも、なぜ6ドアではなく4ドアなのか、という問題なのかしら? 確かに、6ドアの方が便利だとは思うけれど、車体がやたらと長くなってしまうからかしら……
來未
いけない! それよりも、このエレベータはとっくの昔に目的階、17階についているべきだと思うの! あなたたちも、17階を押したのでしょう? もっとも、私が17階を押しているのだから、あなたたちが何階を押したのだとしても、たいした影響はない、つまり、あなたたちの行動によってエレベータの予想移動時間が延びる事はないわけだけど
澄子
私も、17階を押しましたよ! だから、來未さんが17階を押す必要はなかったんです。このエレベータは、同じボタンを何回押しても取り消せないタイプだから、完全に、それは無意味な行為でした。でも、それ以前に、私は今日のエレベータが特別遅いとは思いませんよ。もしも、本当に気になるのだったら、そこの電話機から、管理会社に連絡できますけど。いえ、その前に、早苗にも訊いてみましょう。早苗はどう思う?

早苗も、今日のエレベータが特別に遅いとは感じていなかった。普段もこれくらいはかかっている気がする。でも、それは、自分が、時間よりも空間を気にするタイプだからかもしれない、と考えた早苗は、少し返事を保留し、エレベータに乗ってから、今までに起きた変化を振り返ってみることにした。