スポーツクラブについて(14)

エレベータが上昇を続けているのは間違いないように思われた。乗り込んだ後には確かな加速を感じたし、それ以来減速した様子はない。もちろん、知覚出来ない程度の緩やかさで徐々に減速し、既に下降へと転じていることもありえるけれど、その可能性は排除していいでしょう……。そんなエレベータ、聞いたことないし。やはり、問題は、あまりにも長い間、上昇し続けているかどうかに絞り込めるはず、と、そこまで思案を進めたところで、エレベータは急に減速し、やがて停止した。やはり、何も異常はなかったのだ、と早苗は考えた。來未も到着に気付き、安堵した。終わってみれば、なんのことはない、ただの移動だった。所要時間も普段通り。ドアが開きはじめ、何の気なしに操作盤を見つめた澄子が息を呑む。「ここ、17階じゃないわ! なんてことかしら、ここはもっとずっと高層の、117階よ!!」。三人が三人とも、このビルには25階までしか存在しないと思い込んでいたので、この気付きは大きな衝撃をともなった。「だから、いつもより時間がかかったんだわ……」。來未がつぶやいた。