スポーツクラブについて(7)

小介は、ある種の、恐ろしく格好よい仏像を見るたびに、これを彫った仏師はどのようにしてこの仏像を戦わせていたのだろう、と心底不思議に思うのだった。小介がその仏像たちを戦わせるとしたら、オーラを身に纏い、雲に乗るなどの方法で空を飛び、使い方のわからない武器から波動を出して打ち合うのが自然であるように思われたが、全く意味がわからないくらい遠い昔に生きていた仏師たちも同じようなイメージを共有しているとは考えにくかった。実際、自分はそのような仏像の動きや戦いかたをどこから吹き込まれてしまったのか詳細に検討しなければならない、と小介は考えた。まず、全体の動きはややゆっくりめだったのではないか。なにしろ、ここ数十年でも映画の格闘シーンはどんどん加速されているわけだから、今、自分が想像する人間の動きは、間違いなく史上最速の部類だろう。とうぜん、仏師たちが想像した仏像の動きはもっと緩慢だったのではないか。時間の最小単位である「刹那」が 1/75秒 にあたるというWikipediaで得た知識も、この説を裏付けて居るように思われた。最小単位としては大きすぎるからである。オーラに関しては、当然纏っているものと思われた。人間の周囲を発光する粒子が漂っている、というイメージは、現在アニメファンから江原さんファンにまで広く受け入れられているのであり、この普遍性は時間を遡っても有効であるように思われた。実際にそのような事を行う生物は存在していないが、直観生物学的にはなんの不思議もないことであり、仏像の背後にあるなんだかよくわからないオブジェのような、帯状のものはそれを表現しているのではないかとも疑われた。ただ、そのオーラを、必要に応じて腕に集めて発射したり、足に集めて高速で移動したり、というような柔軟な運用が可能であったかどうかについては十分検討する必要があると思われた。