カードが使えなくなるかと思った

数年前、シンガポールから帰国した折、銀行口座に100万円近く預金を残したままにしてしまい、いまだに苦しめられている。口座に紐付いたデビットカードがあるため、ネット通販では基本このカードを使うが、ショップによっては何故か使えない場合も多い。口座残高はネットで確認できるが、ログインには、ボタンを押すと数字が表示される小さなデバイスが必須であり、帰国当初はこのデバイスを利用可能にする手続きを怠ったため、残高が全くわからなかった。残高が確認できないデビットカードはまさに魔法のような使用感で面白かったが、不正に利用されているかもしれないという不安が高まったため、頑張って何度か銀行へ電話し、デバイスを再送してもらった。デバイスを使って残高を確認すると、アベノミクスのおかげで円換算の残高が増加しており、驚いた。

その後も、不正な海外送金へ利用されている口座があるため、デビットカードは基本海外での利用を禁止する、使い続けたい場合はその旨連絡せよ、という指示に対応したりしつつ、なんとか残高を減らしてきた。昨年の暮、カードの有効期限がまもなく切れるため、新しいカードが送付されてきた。新しいカードをアクティベートするためには銀行サイトへログインする必要があり、久しぶりにデバイスを探したのだが、驚いたことに、あれだけ苦労して手に入れたデバイスが見つからなかった。一度苦労しているので、保管場所も固定してあり、絶対になくなるはずがないのに! SMS送信でのアクティベートも試したが、国外からだからなのか、そもそも送付できなかった。デバイスをどうしても見つけたかったため、部屋を大掃除した。しかし、デバイスは見つからなかったので、古いカードの利用期限は切れ、私の口座は利用不能になった。と、思われたのだが、未練がましく、銀行サイトを眺めていると、デバイスの代わりに、携帯電話でSMSを受信することにより、ログイン出来ることがわかった。試してみると、確かにログインでき、カードのアクティベートも可能であった。そこで私にはっとひらめくものがあった。具体的には、SMSで過去にログインしたことがあったような気がした。そして、SMSでログイン出来るのであればこのデバイスはもう不要だから捨ててしまおう、と思い、即捨てた。断捨離だ! と思った。ことを思い出した。SMSでログイン出来る、ということを忘れてしまうことはないだろう、と思った。ある日の出来事であれば忘れてしまうかもしれないが、デバイスがなくてもSMSでログイン出来る、というのは確固たる事実なのだから忘れないだろう、と思った。そう思って捨てた、ということを思い出した、様な気がしたが、それがいつくらいのことなのかもわからないし、そもそもSMSでログイン出来るからといって何もデバイスを捨てる必要はないわけで、そんな事をするだろうか? という気もする。この後、部屋のどこかからデバイスが出てくればこの記憶は間違いだったことが判明するわけだが、まだ見つかってないので本当に捨てたのかもしれない。