まっさらブルージーンズPVについて

K2Da2006-09-09

ミュージックV特集1~キューティービジュアル~ [DVD]

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画面中央に白抜きで曲名と℃-uteのロゴ。背景は雲が浮かぶ青い空。雲の明るさからすると、おそらくちょうど画面にギリギリ入るか入らないか、フレームのわずか上に太陽があって、そこを中心に空が回転している。空が回転している、というのはあまりにも自己中心的なので見方を変えると、上空を見上げながらカメラが時計回りに回転している。ただ、カメラが回転している、と考えるとカメラマンは相当無理な体勢をとらざるを得ない。最初の八秒無音でゆっくり90°ほど、曲が始まると二段階で加速しておそらく続く八秒で二回転以上する。何度回転するのか、はっきり断言できないのは、画面を覆い尽くす勢いで有原さんの顔が近付いてくるため、途中から青空が見えなくなるからです。有原さんは登場した段階で相当でかい。なんの前触れもなく、バストアップで画面に登場、上下は画面一杯、肩幅も画面の半分を超える。有原さんはまったく回転していないため、やはり回転しているのは空のほうだったんだな、と思う。「まっさらブルージーンズ!」と有原さんが叫ぶ。ジーンズ! の、ジーで有原さんの両耳が画面端に来るくらいまでズーム。この時点で青空は画面左端からわずかに覗けるだけ。今度は有原さんの左目に焦点を当ててズーム、有原さんの左目が画面を横断するくらいまで大きくなる。有原さんの瞳にはキャッチライトが四つ映りこんでいて、このタイミングで不意に爆発、霧状になる。霧が晴れると、℃-uteの八人が踊っている。さっきまであんなに大きかった有原さんは通常の人間サイズに戻り、画面中央後列で何食わぬ顔。有原さんの瞳から宇宙が生まれた、あるいは、有原さんが℃-uteメンバーを召還したみたいに見える。
以上がインターネットで話題騒然、まっさらブルージーンズPV導入部です。頭がおかしい、宗教ビデオっぽい、などの評価がある。なにげにMTVを見ていて、このPVが流れたら驚愕するのは間違いない。僕は初見でこれはアジアっぽい、と思いました。有原さんの顔立ちがそのようだ、と言われることもありますが、そこではなく空が回るところがアジアっぽいと思いました。もし、有原さんの替わりにロビンちゃんさんが出ていてもそう思ったと思います。
つんく♂さんの歌詞は意味がわからない、と良く言われる。OTONA NO NAMIDA DVDのオーディオコメンタリーでも、松浦さんがつんく♂さんの詞を昭和の歌と比較して、意味が取りづらい、と仰っていた。薄々は気付いていましたが、歌っている人も歌詞の意味がよくわかっていない。だから、そもそも何故曲の冒頭部で有原さんがタイトルを叫ばなければならないのか、を考えてもどこにも辿り着けない気はする。ライブなどで披露する場合、「それではもう一曲聴いて下さい」(矢島)「まっさらブルージーンズ」(全員)「まっさらブルージーンズ!」(有原)となり、有原さんだけ何故か同じ事を続けて二回言う人みたいになってしまう。
学校文法で考えると、「まっさら」は形容動詞の語幹、「ブルージーンズ」は名詞です。形容動詞の存在を認めない場合は、そのまま「名詞」+「名詞」です。このアプローチは展望が開けないため捨てます。
冒頭部を除いて、「まっさらブルージーンズ」という歌詞は一度も登場しない。他の場所では、「まっさらぴんのブルージーンズ」である。

まっさらぴんのブルージーンズ
何気に着崩して
大きな夢を翳したら
美人になった

助詞が省略されていますが、これは「まっさらぴんのブルージーンズ(を)何気に着崩して、大きな夢を翳したら、美人になった」と補えば普通に散文として読める。
「美人になる」という言い方、はちょっと気の利いた慣用表現で、私は場を和やかにするのが得意である、と信じて疑わない婦人が好んで多用しそうなイメージがある。「この子は美人になるわよ」といった場合、「この子は将来、美しい女性になるであろう」という、年単位での時間経過と形質の変化をいちどきに表せるため、気の利いた表現に感じられるのではないか。年少の女性に対しては、美人であると形容しないことを利用している。普通の発想では出にくい表現であることは、「毎日を見れば偉丈夫になる」という文章から受ける違和感を検討することから発見した。
しかし、『まっさらブルージーンズ』における「美人になる」は「将来魅力的な容貌の女性になる」という意味ではない。「を見れば美人になる」の場合は、を見ることの習慣づけによって将来的に容姿が好ましい方向へ変化する、というライフハックを表現していると考えられるが、「まっさらぴんのブルージーンズを何気に着崩すと美人になる」の場合は、毎日まっさらぴんのブルージーンズを何気に着崩すことで将来的に容貌が美しく変化する、という意味であるとは考えにくい。毎日を見るのは容易だが、毎日まっさらぴんのブルージーンズを着崩すのは経済的な理由からも困難だし、毎日同じ服装をするよう薦めるライフハックは想像しにくい。
ここで言う「美人」とは、魅力の系統について述べている。つまり、「小悪魔で攻めるか? お嬢で攻めるか? 美人で攻めるか?」という文脈の「美人」だろう。こうした文脈での「美人」は「芯がある女性」、「自立した女性」を指しているのであり、これは「大きな夢を翳したら」の部分とも綺麗に合致するのではないだろうか。
こうしてみると、といってもほんの一部分を見ただけであるが、『まっさらブルージーンズ』の歌詞は意外なほど平易であり、冒頭部の有原さんコールだけが飛び抜けて奇異であると言うことがわかるのではないだろうか。つまり、曲の冒頭部がおかしいのでPVの冒頭部がおかしいのも忠実な仕事だと言えるのではないだろうか。議論系ファンサイト大手の地位が今空いているらしいので狙ってみたいのですがどうでしょうか。