シュタインズ・ゲートの視点について
Xbox360のゲームソフト、シュタインズ・ゲートはすごく面白かった。全く予備知識を入れないほうが面白いというのは本当なので、いますぐ回線を切って、ゲーム屋さんで本体ごと購入するといいです。私はシュタインズ・ゲートの感想を書きたくて仕方がないので、今から書きますが、まだシュタインズ・ゲートをプレイしていない方は読まないでください。どうしても読みたい、という方が、もし、いらっしゃったら(いないと思いますが)、確実に記憶を消去する手段を用意してからにしてください。たとえば、ある種の薬物とか、記憶を封印しなければ耐えられないほどの心の傷*1など、です。
シュタインズ・ゲートはラストが良かった。私はすっかりフェイクに引っかかったので、ダルの声が聞こえたきたときには本当にびっくりしたし、その後の展開には心が躍りました。ラストは本当にやばい。ラストでは、それまでのストーリーにはなかった視点が使われており、これがとてもキマッていたなぁ、と思うのでそのかっこよさを、こう感じたぜ、という説明をします。
シュタインズ・ゲートにはタイムトラベル的な行動が出てくるので、同じようだが微妙に異なる世界が、時間を移動しつつ何度も描かれます。微妙に異なる世界は、それぞれが世界線と呼ばれており、分岐したり収束したりします。シュタインズ・ゲートの視点は主人公の岡部さんに沿って移動しますが、岡部さんはそれぞれの世界線すべてに存在するため、複数の世界線を描いていくためにはルールが必要です。世界線や、時間をまたいで視点が移動する際は以下のルールが適用されます。*2
Dメールが使用された場合
Dメールは過去に送信できるメールです。未来からのメールを受け取った人が、受け取らなかった場合と異なる行動をとった場合、世界線が分岐します。A世界線からB世界線に対してメールが送られた場合、ゲームの視点はメールが送信されたA世界線の岡部さんから、B世界線、同じ時間帯の岡部さんに移動します。この際、A世界線の岡部さんからB世界線の岡部さんに記憶が移動するので、岡部さんとしてはいきなり世界が変容したように感じられ、B世界線の周囲の人から見ると、岡部さんが現実とは異なる記憶を持っているように見えます。世界線をまたいで記憶を維持できるのは岡部さんだけだからです。なお、A世界線がどうなってしまうのかはゲーム内で描かれないのでわかりません。岡部さんは、取り消された、無かったことになった、と解釈してますが、確認しようがないため不明です。
タイムリープが使用された場合
タイムリープでは、記憶をコピーして過去の自分に送信できます。タイムリープを行った世界をA世界線、過去に戻ってやり直した世界をB世界線と呼ぶと、ゲーム視点はA世界線でタイムリープを行い、B世界線に意識が飛ぶ、という形で描写されます。記憶をコピーして送信した後のA世界線における岡部さんは描かれないし、未来の記憶を突然注入されるB世界線の岡部さん、という描かれ方もしません。
「シュタインズ・ゲート」は、β世界線のある時点での岡部さん視点で開始し、そのまま岡部さんの意識に従って視点が移動します。観測者としての岡部さんが分裂しそうな時点、Dメール、タイムリープ使用時には、前述のルールに従って描かれていきます。つまり、常に過去へ介入する側の視点です。岡部さんが、未来から送信されてきた記憶に意識をのっとられたり、Dメールで行動を左右されたりする姿は描かれません。が、ラストの場面では、未来の自分からDメールが送られてきます。ここが素晴らしい。叙述トリックにやられた感じに近い。なぜそんなにかっこいいと思うのかわからないけど、個人的には常に介入する側であるのは不自然であるなー、と感じていたし、視点としての特別さが気持ち悪かったというのもある。最終的に、ゲームで描かれていた意識は未来からの介入がないまっさらな地点から開始した意識でもなければ、今後上書きされる可能性のない意識でもない、ありふれた、全く特別ではない視点であるというのが感じられて楽しかった。でもまぁ、そんなのは副次的なもので、色々場当たり的にがんばって世界を元の状態に戻すなどというある意味小さい目標に満足し、マッドサイエンティストとしての情熱も捨てたよう見えた岡部さんが、やはり実際には満足などしておらず鳳凰院凶真として研究を続けており、ここまでの世界線をまたぐ過程にもすべて意味があり、ついに、世界に混沌、をもたらす、つまり、シュタインズ・ゲートは未来の確定していない世界であり混沌そのものなので、ということであり、よくできた話だなー、というか良くできた話とかじゃなくてかっこいい! オカリンはかっこいいなー、と思いました。正直、途中までは、未来のダルのほうが全然かっこいいと思ってたけど。僕は記憶をなくす術を探しに行こうと思います。