進化する自由を読んでます

自由意志問題について

「進化する自由」(ISBN:4757160127)を読んでいます。まだ第三章の途中ですが自由意思について書いて良いでしょうか。この本を読み終わったら僕にとっての自由意思問題(以下<自由意志問題>)は完全に解決、終了されてしまって二度と日記に書けないかも知れないので。自由意志問題はとても身近な問題なのですが、<自由意志問題>が一般的な自由意志問題と同じものかわからないので、簡単に説明します。
<自由意志問題>は世の中が原子というもので出来ているということについて知った時に発生した問題です。この時点では、自由意志云々よりも、世の中というのは何回やり直しても同じ状態でスタートしたら同じ結果になる、ということに対する恐れの気持ちの方が大きく、意志についてはあまり考えませんでした。何回やっても同じで、どうしようもないなんて嫌すぎる。狭すぎる。世界は原子で出来ている → 世界の動きは計算できるっぽい → 計算は何回やっても同じ結果になる → 世界は何回やり直しても同じ経過を辿り、同じ結果になる → 後悔とか意味ないし → ってか、後悔に意味がないのは知っていたが予定とかも意味無い → だって、同じ結果になるんだし → だから意志とか無い。なにも決められていない。真・善・美に根拠がないのは大歓迎、あまり衝撃でもないし、本当は文化じゃなくて人間が生まれつき持つものなんやで、と言われても、自分とそれ以外の壁が大きすぎるので別にって感じだし(セカイ系を患っているでしょうか?)どうでもいいってか、説得の根拠にはやっぱりならない(普遍的なものだって言っても私はそうじゃないと言われればそれまで)じゃん、と思うけど、意思がないのは酷すぎる。因果関係にまで疑念を提出されてはどうして良いのかわからない。許せない。
しかし、これはあまりにも実感とかけ離れた空想なので考えても意味がない、普段は接近してくる感じすらしないのですが、心が闇に近づき活力が低下すると(今風に言うなら、フォースのダークサイドに囚われると)リアルになる。本当は、"俺はなにをやろうとしてもやり遂げられないなぁ"、という意志に関する諦念と、原子で出来てるから変わんねぇぜ! という<決定論>は全く違うもので何の関係もないのですが、セットで現れる。これは良くない、恐ろしい罠です。香山さん的<私>問題と似ているかも知れない(香山さんファンの方すいません(人形じゃない方の、です))。

量子力学さんとの出会いについて

この素朴な決定論に対する救世主として現れたのが量子力学さんです。これは歴史の話ではありません。今でも僕の科学知識のほぼ全てを支えている、小学生の時に読んだ科学大百科風のもの(ISBNは忘れました)には原子までしか載っていなかったのです。量子力学さんと出会ったのは中学に上がってからです。量子力学さんによると、世の中には確率でしか決められない問題が沢山あり、というか、全てがちっちゃいところではそうなっており、やるたびに違う結果が出るんだそうです。だから、もしかしたら、おまえさんが上手いことやっていることだって有り得た、やっている世界だって"在り"得るンやで。この広い世界にはそういう色々な有り得る宇宙の形がたくさん詰まってて、そのいろんな細かく違ってしまった宇宙や、もっと大胆に基本的なルールまで違っちゃった色々な宇宙があって、そういうのを全部ひっくるめてメタ・ユニバースって呼ぶのはどうやろうか? この言葉はどこかで聞いた気がするけどgoogleしたら一件も出てこなかったので錯覚みたいでした。と、量子力学さんは言いました。
それから長い間、量子力学さんは物事はやり直すたびに結果が変わる、ことに対する担保としてのみ存在していました。

同じ入力からは同じ出力を返したいことについて

しかし、やり直すと同じ結果にならないって言うのはやっぱり同じ条件じゃなかったって言うか、正味な話やり直すってどういう意味なの? みたいな、こともあり、全く意味がわからんし、世の中が決定論的であるかどうか、は、どうやったら調べることが出来るのか、どういう意味を持つのか、どんなに頑張っても確実には予想できない部分があれば決定論的ではないのか、それは自由と関係あるのか、あたりのことが全然わからないし、調べるほどの興味もなかったので放置してあった、というのが本を読み始める前の状態で、今は大変「進化する自由」に対する期待が高まっている時期です。
S>Fマガジン 2005/04に載ってたグレッグ・イーガンの「ひとりっ子」という短編*1のネタばれをするので、気をつけてください。「ひとりっ子」には人間の体を持ったAIが出てくるのですが、彼女の特殊能力がすごい。P39。

クァスプで走るAI、すなわち単一存在(シングルトン)にとってほかの人々と唯一違うのは、自身の個人的な決断が原因で分岐が起きることは決してないことだ。世界全体は相変わらず確率論的に見えるだろうが、シングルトンのおこなうありとあらゆる選択は、そのシングルトンの個性とそのとき直面している状況によって、完全に決定される。
だれにだってそれ以上は望めない。

クァスプというのは量子単集合プロセッサの略でP27

クァスプはいちどにひとつの計算しかおこなわないが、唯一の結果に至る過程で、ほかのありうる結果を現実にする危険をおかすことなく、オルタナティヴをいくつでも含む重ねあわせの状態を経過できる。

のだそうです。他にも色々書いてあるのですが全く理解できなかったので、同一の入力からは同一の出力を返すAIを作ることが出来るコンピュータだと解釈しました。普通のコンピュータで脳、神経の動きを正確にシミュレートすると、どうしても確率でしか処理できない部分があるから? なんでしょうか。正直、このあたりは意味がわかりませんでした。
このAIは一人だけ決定論的な生き方をしていて、それに対して自由意志を奪われてるンやで、と非難する人なども出てきて、その辺がよくわからなかったので、その辺に気をつけて「進化する自由」を読みたい。目的を持って読まないとさっぱりわからなくなるからです。三章途中の時点ですでに、ぼんやりしている部分がかなりある。またライフゲームか!! と言うのもあるし。でもオモシロいです。