「万物理論」の素晴らしさについて

万物理論」(ISBN:4488711022)を読みました。これはSFなんですけど、とても素晴らしい体験になることは間違いないので是非読みましょう! 僕は昨日一日かけて読んだのですが、頁を捲る度に目新しい啓示や、人生に付き纏うお馴染みの問題に対する姿勢やに出会ってしまうので、所々で本をおいて考え事をしなければなりませんでした。僕はグレッグ・イーガンさんが一番好きなSF作家で、今も以前に出版された短編集の作品についてぼんやりと考えている事があり、また、この一大長編にもその以前の短編で触れられていたような問題が、また形を変えて出現している*1ので、それを見るとこの小説には僕の考えていることが出てくる! と思い感動してしまいます。という、マッチポンプのような循環構造を差し引いてもとても面白いと思いますよ! 本当なら全文引用したいところですが、600Pもあるし、良くない事が起こりそうなのでしません。ちょっと今脳内に何か器質性の異常が発生しているのではないかと疑ってしまうほど面白かったです。

好きな宇宙について

"主観的宇宙論もの"らしいので、「宇宙消失」や「順列都市」にも似たアイデアが一番の大きな話の核になっているのですが、「宇宙消失」みたく、人間全部、知性を特別扱いするのが余り好みじゃないです。<基石>は一人<私>で良いのじゃないかなぁ、と思うので「順列都市」の塵理論の方が気持ちいい。全ての状態の宇宙が存在?していて、それぞれの遷移可能な状態の間に共通する開闢が遷移を意識している、という感じの宇宙が一番好きです!

付箋紙について

とても面白い、カッコ良いと思った文章に付箋紙をはっていたのですが、最終的には付箋紙の貼り過ぎで付箋紙の意味が失われてしまいました。僕はこれから思想/信条を尋ねられたら無政府主義者だと答える事にします。第一部でちらりと出てくるだけの《自発的自閉症者協会》や、その他の様々な思想信条と交わされる会話がカッコよすぎるので丸暗記して日常会話で使いたい。一度簡潔な形で言い切ってから、不明確な部分や飛躍した部分を補うように後から軽く言い直す、というのは頭がよく見える喋り方だそうですが、馬鹿にしているように見えることもあるそうです。P209。

バクーニンよりずっと役に立つのさ、こいつはね。社会がいかに組織化されるべきかについて、人々が細部にわたって同意することは、これからも決して無いだろうし−−同意する必要もあるまい? しかし人が……いや、地球のあたえてくれた"自然のままの"ユートピアが存在し、われわれはみなそこへ還るべきだという《エデン主義》の信奉者は別として……人がなんらかの文明をうけいれるということは、人間とは生来の行動欲求をもつ動物だという事実に対する文化的反応−−その欲求に無抵抗で従う以外の−−を選択する事を意味する。

*1:実際に書かれたのはこちらが先のもあるのだと思いますが