壊れる

ジムを出てバイクで家に帰る途中、最後の曲がり角でなにか硬いものを踏んだ。少し気になったので一旦バイクを家に止めてから曲がり角まで戻ると踏んだのは携帯電話だった。折畳式で、ヒンジが完全に壊れて配線だけで液晶が繋がっているが、液晶も割れて全く読めない。道に落ちていたのだから俺が悪いわけじゃないと思って携帯はその場に棄て、部屋に戻ると、鍵が開かない。鍵を抜いてよく見てみると少し曲がっている。何の気なしに反対向きに曲げて直そうとしたら、折れた。一瞬頭が真っ白になるが落ち着いてよく考えてみる。
僕は寮に住んでいるので、左隣は同期の部屋だ。部屋にスペアキーがあるはずなのでベランダを通らせてもらえば簡単に全て解決する。既に24時近いが、寝ているはずは無いので何度かドアフォンを押してみるが返事がない。--ああ、しまった、こんなことなら面倒がらずに挨拶とかしておくんだった。と思ったが、部屋の電気がついていないので残業でまだ部屋に戻れないのかもしれない。こうなったら自力で鍵を直そうとコンビニまで行ってアロンアルファを買ってきた。鍵をくっつけてみると意外にいけそうな気がする。少し歪んでいるが鍵穴に入ればなんとかなるんじゃないかと突っ込んでみると、また途中で止まった。しかも、今度は抜いたときに破片だけが鍵穴の中に残ってしまう。自分の頭の悪さに泣きそうになるが、もう一度良く考えた結果、ベランダはどこまでもつたえるのだから全ての部屋を回ってみようということで小学生さながらにピンポンしまくると親切な同期が出てきて部屋を通らせてくれた。
ちょっとしたアクロバットの後、なんとか部屋に戻れたので今の心配事は鍵穴に残った鍵の破片だけである。このことから僕が考えたのは、もしものときを考えて部屋には鍵をかけない方が良い、ということと(だって鍵をかけていなかったせいで空き巣に狙われる可能性と、鍵を落としたり壊してしまう可能性を比べると後者の方が大きそうだ)、なにか良いことがあった後には悪い事が起きると思って用心した方が良いってことだ。