ハバネロについて

日本の屋外では一年草として扱われるらしいハバネロは、だから、年の暮れ、西向きのベランダで今にも枯れそうな風情かというとそうでもなく、茎の下部についていた葉は落ちてしまったものの、全長50cmほどの上半分はまだまだ葉も元気で、ときどき、小さな花を咲かせています。花は白く、実は赤いらしいのですが、実をつけたことはありません。もともと、6月の送別会で鉢と土と種をセットにしていただいたもので、一緒に東急ハンズで買ってきたらしい入浴剤は、まだそれを使おうと思うほどの入浴機会が得られないので棚に置きっ放してあります。送別会の帰りには随分と酔っており、また、その日は朝からの雨で雨具を携行中、自転車の前輪へ自分の傘を引っかけて頭からアスファルトへ突っ込んでしまいました。転倒直後は酔っていたので痛みもなく、部屋についてからシャワーを浴びてのち床につくほどの、普段は見られない余裕を見せていましたが、翌朝目覚めると両手が血みどろになっていたのでとても驚きました。今、育てているハバネロはその時大量に浴びた血で自然に発芽したものです。
最初は職場で育てていたのですが、朝、出社するとまず鉢を抱えて東向きの窓辺へいき、お昼には自席で水を遣り、夜には西向きの窓から鉢植えを回収してくるというほどの、甲斐甲斐しい栽培ぶりでした。一カ月ほどで双葉の上に本葉が出てくるので、その時点で育ちのよさそうなもの以外は間引きします。その後は、別段、日向においても、おかなくても、一日の成長に違いが見られない、という近視眼的な判断のもと、だんだんと日向へ持って行く機会も減り、水遣りさえも忘れがちになりましたが、もとの生れからか育ちが良く花もつけるようになり、道行く人に、あ、おーきくなったねー、なんで会社で育ててるの? そもそもなんの花なの、ありがとう、などの言葉をかけられるようになりました。秋口に、どうしても家へ持ち帰る必要が出たのでそれからは家で育てています。最初はおとなしくしていたのですが、最近はだいぶ元気になりました。心の闇を栄養にして育つようなので私も元気付けられます。