日記

川崎のヨドバシで安売りをしているというので、友達についていく。最近寝付かれないときになにかとても面白い事を思いつき、それをメモしようと思うのだが、手書きするとまず確実に解読できない、どうせ後で見たらつまらない事に決まっているのだがPCを立ち上げるべきだろうか、それとも無視して寝るべきだろうか、という葛藤に頭を悩ませているうちに、そもそもどこが面白いのかまったくわからなくなるという事態が頻発している。万が一本当に面白い事を思いついていたら非常に勿体無い。これ以上の面白い事損失を未然に防ぐため、キーボード付きで快適に入力できるPDAを購入し枕もとに設置しようと思った。ヨドバシにそういった用途にも向くであろうシグマリオンIIIが展示されていたが、ヨドバシに着いた頃にはもうそんなに大きな買物を出来るほどの気力が残っていなかったので、予想通り何も購入しなかった。
友人が、会社の先輩とその彼氏に焼肉を奢らねばならんのでもう帰ろう、というので19時位に帰る。帰りの電車の中では、なぜ会社の先輩とその彼氏にまで飯を奢らねばならんというような事態に陥ったかについての経緯と、その先輩がいかに可愛いかについての説明を受け、心細いので一緒に焼肉についてきてくれと勧誘されるが、知らない人と飯を食べるのはあまり好きではない(知ってる人とでもあまり好きではない)ので丁重にお断りした。のだが、どうしても一緒についてきて欲しい、と何回も頼まれるので、何故僕が人と飯を喰うのがあまり好きでないかを、自分の生い立ちにまで遡って説明していると、僕の左隣に座った白髪のおばあさんが手提げからノドアメの袋を取り出し、二人で仲良く食べるように、と十個ほどのノドアメを手渡してきたので、丁寧に礼を述べて受け取り、僕はそんなにのどが悪いような声を出していたのか、それともこれはうるさいから黙れ、というおばあさんなりの意思表示なのかしらん、というようなことを考え、もし後者だったら大変な事になるかもしれんからもうあまり大きい声で自分の不幸について喧伝するようなことはやめようと思い、電車から降りるまでは大人しくOrkutが凄いやりたいけど誰か誘っていただけはしませんでしょうか、というような事を話した。
僕は礼儀正しいので意外とおばあさん受けがよく、さっきのおばあさんも純粋に好意からのどあめを恵んでくれたのではないだろうか、と思いなおし、電車を降りてから友人にそのように訊いてみると、君は電車内でおばあさんに物を貰ったのははじめてか?と訊き返され、質問に質問で返すとは無礼な奴だな、と思ったが、正直に、電車内でおばあさんに物を貰ったのは初めてだ、と答えた。すると友人はふふんと鼻で笑い、俺はよく電車の内外を問わずいろんな知らないおばあさんに物を貰うが、君、さっきのあれは好意なんかからではないよ、間違いなく、もっと敵意に満ちたものだ、これからは気をつけるんだね、と言った。彼は、東京に来てからは回数こそ減ったが、よく知らないおばあさんに物を恵んでもらっており、故郷に居た頃なんかは、まずおばあさんが近隣の人にお菓子などを配りだし、それにつられてそこに居合わせた駄目なおじいさんがお酒を周りに振る舞い、ちょっとした宴会のようになる事が良くあったそうだ。僕は彼と中学から知り合いで、全く同じ路線を使用していたはずだが、そのような光景には一度も遭遇した事が無く、これはなにか僕に周りの空気を冷やすような欠陥があるからなのだろうか、と思った。