コピーライターについて(一人称だけいれかえた)

彼は広告が好きで電車に乗るといつも中吊り広告や窓の外を流れていく言葉たちだけを眺めて彼を乗せた巨大な機関が目的地に着くのをただ待っていた。本当は手持ち無沙汰恐怖症なので公共交通機関に乗るときはいつもカバーを取った単行本を抱えていくのだが、本を開くとものの数分で乗り物酔いするし、読書はそれほど好きではないから結局は広告を眺める事になる。
飽きもせず卑猥な言葉が並べられた週刊誌の広告を眺め耽る彼の頭に浮かんだのは、はたしてこのような広告もあのコピーライターたちが作り出しているのだろうか?という事だった。彼は糸井重里のことを考えていた。「クウ、ネル、アソブ」。この俳句よりも短いフレーズを思いついただけで、億万長者?、は無理にしても百万長者(ミリオネア)級のギャラを手にするという職業。作家をその単位文字数の報酬で評価する事が可能であるならば、恐らく東西の偉大な作家達で構成されるであろうその番付にコピーライターをランクインさせる事もまた許されるだろうか?恐らく優秀なコピーライターたちは小説家や戯曲家や批評家達、福音を説いた使徒達を軽く蹴散らしてしまうだろう!!つまり、コピーライターこそが最強なのだ。
彼がそのような昏い物思いに沈んでいるうちに列車は彼にとっての牢獄である巨大な電脳ビルへと吸い込まれて行くのであった。
主語を変えるだけでこんなに恥ずかしいなんて新鮮でした。練習あるのみです。